社員一人一人のキャリア自律を支援し、組織全体の生産性とパフォーマンス向上を実現するキャリア研修
キャリア研修とは?
キャリア研修は昔からある研修ですが、最近、従業員のキャリア自律を促進する流れが強まっている中で、キャリア研修の実施企業が増加しています。キャリア研修の実施が増えている背景となるキャリア自律の概念、また、企業におけるキャリア研修の現状、およびキャリア研修が求められる背景を解説します。
キャリア自律とは?
キャリア研修についてお伝えする前に、キャリア研修に力を入れる企業が増える背景となっている「キャリア自律」の考え方を簡単に解説します。
「キャリア自律」とは、個人が自分自身のキャリアを主体的に設計し、継続的にキャリア開発に取り組むこと、またキャリア開発をする能力を指します。
キャリア自律を実現するためには、
①自分の強みや興味、価値観を把握・認識すること
②自己理解に基づいて、キャリアプランを計画すること
③目標に向かって継続的に行動し続けること
が何よりも大切です。
また、キャリア自律を実現する上では、自己研鑽や人的ネットワークの構築も含まれます。学習意欲を持ち続け、新しい知識やスキルを習得することで、変化する市場や職場にも対応できるでしょう。また、人的ネットワークを通じて多様な人々と交流し、新しい機会や情報を得ることも、キャリア自律には欠かせません。
こうしたキャリア自律を実現するための入り口となるのがキャリア研修です。
企業のキャリア研修の現状
企業におけるキャリア研修の実施状況を確認します。マンパワーグループによる調査によれば、「社員に対しキャリア研修を実施した」と回答した企業は29.8%と約3割。実施検討中という27.1%を併せると、6割近い企業がキャリア研修を実施している、実施を検討していることが分かります。
また、キャリア研修を「実施」もしくは「実施を検討」と回答した企業に対して、社員のどの年齢層が対象かを聞いた結果を見ると、30代が70.1%と最も多く、次いで40代が約5割、3番目が20代の37%という結果でした。30代~40代の中堅・ミドル層に対するキャリア開発に、企業の関心が集まっていると言えます。
キャリア研修が求められる背景
日本でキャリア研修を実施する企業で増えている背景について解説します。
終身雇用制度の崩壊
日本における終身雇用制度は、雇用の安定性を担保し、企業と社員の強い信頼関係を築くことに役立ってきました。しかし、経済環境の変化や企業競争の激化、また、雇用の流動化(転職の一般化)により、終身雇用制度はほぼ完全に崩壊したと言えるでしょう。結果として、労働者は一つの企業で一生働くというキャリア戦略の方向転換を迫られています。次に紹介する人事制度の変革ともあわせて、各労働者が自らのキャリアを自ら考えて、形にしていくことが求められる時代になっています。
この時代背景を踏まえて、企業も従業員のパフォーマンス向上、また、優秀層の離職防止に向けて、キャリア研修を実施するようになっています。
成果主義・ジョブ型人事制度の導入
終身雇用制度の崩壊と並行して、日本企業では成果主義への切り替えが進み、更にこの数年でジョブ型人事制度の導入も進行しています。年功序列から、成果や職能に応じた人事制度に変わる中で、成果を上げるためのスキル向上や自己研鑽は今まで以上に重要になっています。
企業側も、従業員の意欲を向上させる、また、意欲ある従業員に能力向上の機会を提供するために、キャリア研修を始めとしてキャリア自律、そして、成長機会の提供に力を入れています。
キャリア安全性への渇望
終身雇用制度の崩壊やジョブ型人事制度の導入が進む中で、とくに若年層は、自身のキャリアの安定性やキャリア形成、つまり「キャリア安全性」に関心を持つ傾向が高まっています。キャリア安全性とは「この会社・職場でこのまま仕事していって、自分のキャリアは大丈夫か?」「もし仮にいま会社が倒産したら、自分には市場価値があるのか?」といった感覚です。
キャリア安全性に不安が生じると、不安由来の転職を生み出すことになります。企業は、キャリア研修における経験や能力の棚卸し、自己認知、キャリアビジョンの構築等を通じて、従業員のキャリア不安を払しょくすることが求められています。
エンゲージメントの必要性
現代のビジネス環境の中で、企業が継続的に業績を向上させるためには、社員のエンゲージメントが欠かせません。特に、ソリューション提案やイノベーションの促進といった高度な知的労働を実現する、また、高付加価値なホスピタリティや感情労働の発揮を実現するには、社員が主体的に業務に取り組む必要があります。
キャリア研修は、社員が今やっている仕事に意味や価値を見いだし、エンゲージメントを向上させることにも役立ちます。企業のミッションやビジョンと同時に、今やっている仕事が自分の人生・キャリアにとっても意味や価値があることを確認することで、仕事へのエンゲージメントが生まれます。結果として、高度な知的労働や感情労働などを求める企業ほど、社員のキャリア自律やエンゲージメント向上施策に力を入れるようになっています。
キャリア研修の目的
企業がキャリア研修を実施する主な目的を3つ解説します。
離職防止と定着率の向上
キャリア研修を実施する目的の1つ目は、社員の離職防止と定着率の向上です。
それぞれの社員が、組織における自身のキャリアパスを明確に描き、キャリア実現に向けて日々の業務に取り組むようになることで、今の職場で長く働く原動力が生まれます。逆に、今の職場でこのまま仕事することが、自分のキャリア形成につながらないと感じれば、社員は優秀層から離脱していくでしょう。
キャリア研修とキャリア自律は、離職防止を実現するためにも不可欠なものとなっています。
エンゲージメントの向上
キャリア研修は、従業員のエンゲージメントを向上させるための手段の1つでもあります。前述の通り、キャリア研修等を通じて、今の仕事をやっている自分自身にとっての意味や価値、納得感が得られます。
エンゲージメントが高い従業員は、仕事に対する情熱や意欲が高く、生産性が向上することが調査で明らかになっています。結果として、企業全体の生産性と業績向上も期待できるでしょう。
主体的な学びや自己啓発の促進
従業員の主体的な学びや自己啓発を促進する上でも、キャリア研修は重要な役割を果たします。キャリアビジョンが明確になると、そのビジョンを実現するために必要な自己成長や経験、ポジション、待遇等が見えてきます。そのギャップを埋めるために、従業員は主体的に学びや自己啓発に取り組むようになるでしょう。
キャリア研修を実施するメリット
前章では企業がキャリア研修を実施する目的を紹介しました。目的を踏まえた上で、キャリア研修を実施することで得られる効果について解説します。
欠員補充の負担が減り、組織全体の収益安定につながる
前章の通り、キャリア研修による効果のひとつが、社員の離職防止と定着率の向上です。定着率が向上し、既存社員が長く職場で働いてくれるようになれば、その分、離職に伴う欠員人材を採用・教育する工数や費用が減少します。経験豊富な従業員が長く在籍することは知識やノウハウの蓄積につながりますし、組織全体の収益安定にも寄与するでしょう。
ワークエンゲージメントが向上し、組織の競争力と生産性が高まる
ギャラップの調査*を通じて、日本人の「仕事に対する意欲」は世界各国でも最低水準であることが分かっています。ギャラップ社は結果について「日本では抜本的な働き方改革がなされたにもかかわらず、ここ10年以上、仕事に意欲を持てない人の割合が高止まりしている」と指摘しています。 OECD加盟国の平均を下回る給与水準や、中小企業の収益性低迷なども、日本企業における従業員の仕事への意欲の低さが影響している部分もあるのではないでしょうか。
仕事へのエンゲージメントを高めるためには、キャリア研修などの取り組みを通じて、「この仕事に取り組むことが、自分の人生・キャリアにとって意味がある」と個々の従業員が納得して働く状態を作り出すことが大切です。
業務の取り組み姿勢が変わり、チャレンジ精神や主体性を発揮するようになる
従業員の業務に対する意識や取り組み姿勢の変化も、キャリア研修等の施策で得られる効果の1つです。前述の通り、仕事が「上に言われてやるもの」から「自分の人生やキャリアにとって意味がある」と納得することで、仕事への主生体が生まれます。自分自身にメリットや恩恵があると実感することで、従業員は成果を上げるための工夫や努力を惜しまなくなるでしょう。結果として、日々の業務に対して高い意識を持てるようになります。
主体的な学習や自己啓発が促進される
キャリア研修は、従業員の主体的な学習や自己啓発を促進する上でも重要です。自身のキャリア目標を明確にし、達成に向けた具体的なアクションプランを立てる上で、キャリア研修が大きな支援になります。
自分の幸福や成功というものは、どんな人にとっても一番の関心事です。キャリア研修等をきっかけに、自らのキャリアを“成功”させるためには、長期的な視野でスキルをアップデートしたり、新たな経験を積んだりする重要性に気づくでしょう。それが主体的な学習や自己啓発の原動力となります。
提案が増え、イノベーションが促進される
管理職の人であれば、メンバーに対して「もっと積極的に提案して欲しい!」「上手くいったことがあれば共有してチームの底上げに貢献して欲しい」といった思いを持ったことがあることでしょう。キャリア研修によるエンゲージメントの向上は、業務改善や新しいプロジェクトの提案を増やす上でも効果を発揮します。表現に語弊があるかもしれませんが、キャリアビジョンを描くことで、会社のために提案するのではなく、自分自身の経験や成功のために提案するようになるからです。これは非常に強い動機です。
従業員の主体的な提案や業務改善が増えることで、上司とのコミュニケーションも活発になり、業務の効率化やイノベーションの促進にもつながるでしょう。
キャリア研修を実施する流れ
キャリア研修を実施するまでの流れをステップ順に解説します。
対象者と目的・目標の明確化
キャリア研修を効果的に実施するための最初のステップは、対象者と研修の目的・目標を明確にすることです。
中堅社員やミドル、若手社員などキャリア研修の対象者は様々であり、それぞれの職層や年代、ライフステージ、性別等によって抱えるキャリアの悩みは異なります。そして、会社側からの期待事項も異なるでしょう。キャリア研修を企画する際には、どの職層・年代・性別・ライフステージの従業員等を対象にするかをしっかり検討することが重要です。
基本的にキャリア研修の目的は、従業員のキャリア自律を支援することであり、対象者に応じた具体的な目的やゴールを設定する必要があります。組織のビジョンや課題、受講対象となる従業員のニーズなども考慮しながら進めていきましょう。
内容と方法の検討
キャリア研修の内容と方法を決める際は、研修対象者の課題やニーズ、目標に応じて検討することが必要です。前述の通り、各対象者ごとに生じやすいキャリアの悩みは異なるため、効果的な内容と方法を設計しなければ期待する効果は得られません。例えば、漠然としてキャリア形成の悩みを持つ20代の若手社員には自己分析やキャリアデザインの方法を教える、中堅やミドル層には棚卸しからの自己肯定感と発見が重要かもしれません。
各年代層ごとに適した内容と方法を検討し、受講者が実際の業務に活かせるスキルや知識を習得できるように設計することが、効果的なキャリア研修の実施につながります。
キャリア研修の実施
対象者、目的とゴール、研修内容と方法が設計できたら、キャリア研修の実施フェーズに入っていきます。キャリア研修のカリキュラムは、講義、個人ワーク、ペアワーク、グループディスカッションといった方法を組み合わせて進めていきます。特に、個人ワークとグループディスカッションは重要です。個人ワークでは、自身のキャリアの振り返りや目指したい人物像を掘り下げ、グループディスカッションでは、他の参加者との意見交換やフィードバックを受ける・・・こうしたプログラムを通じて、受講者は自分の視野や考え方を広げ、今後の成長に必要な取り組みを明確にすることができるでしょう。
なお、キャリア研修は、知識やスキルを得ること以上に、自らのキャリアについて深く考え、その後の行動変容や行動計画のヒントを得ることが大切です。講師と受講生による1対多の研修だけでは、キャリアビジョンを明確にするのに限界があるため、研修後に上司や人事、社外を交えた「キャリア面談」を組み合わせることで、効果を高めることができます。
個別のキャリア面談
キャリア研修を実施した後は、個別にキャリア面談を設けることが有効です。キャリア面談は、対象者と1時間程度かけて一対一で行う面談で、人事が主導し、受講者の上司と実施する、若しくは社外のキャリアコンサルタントに委託する方法があります。
キャリア研修を「キャリアを考え始めるきっかけ」と位置付け、キャリア面談を「考えや意見、不安を言葉にしてビジョンを明確化し、行動計画を決める場」とすることで、研修効果の最大化を目指していくと良いでしょう。
面談は、キャリア研修から1ヶ月以内の日程を目安に設定すると効果的です。また、キャリア面談では、事前に課題を設定し答えられるように準備してもらうことも有効でしょう。なお、キャリア面談を効果あるものとするためには、どれだけ心理的に安全な場を作り、従業員が本音を喋れる環境にするかが肝になります。
職場での実践行動
キャリア研修を通じて、受講者は自分の強みや弱み、興味や価値観、目標や夢などを自己分析し、キャリアプランを作成します。しかし、それだけでは期待する効果や変化は生まれません。描いたキャリアを実現するためには、学んだことを具体的な行動に落とし込み、職場や業務の中での行動に繋げてもらうことが不可欠です。
職場での実践行動の一例として、以下に挙げたことも参考にするとよいでしょう。
・自分の得意なことや興味あることを見つけるため、様々な業務やプロジェクトに積極的に参加する。
・キャリアの方向性を確認するために、上司や先輩、同僚と定期的にフィードバックしあう。
・スキルや知識の向上のために、社内外の研修やセミナー、資格取得に挑戦する。
・自分のキャリアビジョンや夢を具体化するために、ロールモデルやメンターを見つけて話す機会を作る
・社内の公募や人事制度などを把握して、自分のキャリア形成に向けてどう生かせるかを考える
職場での実践行動は、受講者にとって最重要のステップです。継続して行動し続ける、また、行動結果を振り返り、次の行動につなげることが大切です。
実践行動を踏まえた定期的なフォローアップ面談
職場での実践行動に一定期間取り組んだ後に、フォローアップ面談を実施することが効果的です。フォローアップ面談は、キャリア研修やキャリア面談で設定した目標やアクションに対して、どのような成果や反省があったかを振り返り、次のアクションプランを立てる場です。
面談では、受講者に以下のような質問をすると効果的です。
・職場で具体的にどんな行動をしたか?
・実践行動から何を学べたか?
・行動した結果、うまくいったこと、期待通りにいかなかったことは何か?
・実践行動をしてどんな成果が得られたか?
・上司や人事から今後どんな支援をして欲しいか?
質問を通じて、受講者は自分の行動を振り返り、次のアクションを決めるためのヒントを得られるでしょう。定期的なフォローアップ面談を通じて、社員のキャリア自律を支援するサイクルを作っていきましょう。
年代別のキャリア研修プログラム例
受講者の年代層によって生じるキャリアの悩みや課題は異なります。社員の大まかな年代に応じた、キャリア研修のプログラム例を解説します。
20代向けキャリア研修
20代社員は、職場や業務にも慣れた一方で、目の前の仕事に対するマンネリ感やキャリア不安を抱えやすい時期です。同世代との比較や転職サイトを目にする中で、キャリア不安が、不満や転職欲求につながることも多くなりがちです。このような状況を踏まえ、20代向けのキャリア研修では、社員自身の価値観や目指す方向性を確認できるようなステップを設けるとよいでしょう。
ただし、社内でのキャリア構築を強調しすぎると反発を招く可能性があるため、注意が必要です。「今の会社でも自分が望むキャリアは築ける」と気づいてもらえるような内容に落とし込むと効果的です。また、20代は社員は、短期的な視点でキャリアを考える傾向もあるので、3年後や5年後といった中長期的な視点を持たせる工夫も重要になります。
30代向けキャリア研修
30代は、専門性が高まる一方で、家庭や子育てなど私生活でも変化が生じる時期です。このため、仕事と家庭のバランスを取ることを難しく感じる人も出てくるでしょう。完全に1人前となり、個人の成果でシビアに評価されるようになるため、同期との待遇等で差がつき始め、気持ちが折れたり、受け身になってしまったりする人も少なくありません。また、順調に進めば30代はチームリーダーやマネージャーとしての役割を期待される時期でもあります。今後のキャリアを見据え、専門性を磨くのか?それともマネジメントに軸足を置くか?といった方向性を検討する必要もあるでしょう。
キャリアの転換期となる30代社員のキャリア研修では、これまでのキャリアを棚卸しし、自分と組織の成長を結びつけながら、今後のキャリアビジョンを明確化するプログラムが効果的です。組織の目標と個人の成長を両立させるために、自身のスキルを再評価し、将来に向けた具体的な行動計画を立てる支援が求められます。
40代向けキャリア研修
40代は、これまでに培ってきた自身のスキルや経験を基に、組織の中核人材としての活躍が求められる時期です。同時に、40代は私生活における状況も多様化していますし、30代以上に役職や待遇の差も開いており、キャリア上の悩みや業務に対するモチベーションも個人差が大きくなるでしょう。
こうした多様な背景を持つ40代社員の活性化は、組織の生産性向上とイノベーション創出に大きく影響します。40代向けキャリア研修では、まず自分自身の強み・持ち味を再確認し、今後のキャリアの変化や方向性を高い視座と幅広い視野で考えられるようにする工夫が大切です。自身の強みを認識し、組織にどのように貢献できるか、今後のあり方やキャリアの方向性を見つけるためのプログラム内容を検討しましょう。 また、前述の通り状況が多様化しているため、1対多の研修だけで効果を期待することは難しいでしょう。個別のキャリア面談などと組み合わせることが望ましいでしょう。
50代~60代向けキャリア研修
50代~60代は豊富な経験と知識を持ち、企業にとって価値ある戦力と言えます。一方で、かつては一般的だった終身雇用や年功序列が成果主義とジョブ型に変わり、自己のキャリアを主体的に切り拓くことが求められるようになりました。一方で、日本企業の場合、人事制度の改定で年収ダウンになる不利益変更が生じることは少なく、また、役職定年等までの残り年数が見えていたりする中で、意欲を奮い立たせることは難しい側面があります。
こうした背景を踏まえ、50代~60代向けの研修では、自分の経験や能力を再評価し、キャリアを自律的に構築するためのマインドセットを育むことを目的に検討していくとよいでしょう。これまでのキャリアを振り返り、自分の経験や能力、強みを再評価します。さらに、キャリア自律研修を通じて、自分のキャリアを自律的に構築するためのマインドセットを醸成します。また、変化する社会に柔軟に対応できる力を養うための柔軟なキャリアプランニングを行い、具体的な目標設定と計画を策定することも重要です。
キャリア研修を成功させるためのポイント
ここでは、キャリア研修を実施して成功させるために大切なポイントをお伝えします。
社員主体でキャリアデザインを考えてもらう
キャリア研修を成功させるためには、社員主体でキャリアデザインを考えてもらうことが何よりも重要です。この時、注意が必要なのは、研修のゴールを組織の都合や要望で設定しないことです。個人のキャリアパスを、組織が望むキャリアパスに誘導するような研修を実施すると、社員の反発を招き、研修効果が低下する恐れもあります。
あくまでも社員主体で研修プログラムを設計し、社員が主体的に将来をイメージできるように支援することが、キャリア研修の効果を高めることにつながるのです。
経営者、幹部役員の理解と協力を得る
キャリア研修を行うにあたっては、経営者や幹部役員などの上層部の理解と協力を得ることも重要です。キャリア研修は、営業研修やプレゼンテーション研修といった特定のスキル向上を目的とした研修とは異なり、長期的な従業員のキャリア自立を支援するという目的があります。
この意義を上層部に理解してもらうことで、研修実施のGoサインを引き出しやすくなり、人事担当者も動きやすくなります。また、経営層には、現代のZ世代や中堅層の仕事やキャリアに対する価値観が昭和や平成初期とは大きく異なることを理解してもらうことも大切です。Z世代や中堅層は、終身雇用や年功序列といった、かつての常識とは異なる感覚を持っています。 だからこそ、社員が自らのキャリアや将来を主体的にデザインできることが必要ですし、企業としてキャリア自律を支援することが組織の活性化や事業の成長につながります。
一方で、経営層のなかには、キャリアビジョンを描いたり、キャリア自律を促すと、転職につながるのではないかと考える人もいます。キャリア研修やキャリア支援が企業のwinにつながることを経営層にも理解してもらう必要があるでしょう。
アフターフォローと組み合わせる
キャリア研修は、キャリア自律を考えるための初めの一歩、きっかけとなるものです。したがって、研修を受講するだけでは、個人がキャリアビジョンを描き、学びや行動の習慣が定着するまでには至りません。セミナーなどで「ためになる話」を聞くだけで終わってしまうのと同様に、キャリア研修も「良い目標ができた」「自分も考えないといけないな」と感じるだけで終わってしまう人もいるでしょう。
しっかりと自分事として捉えて、また行動してもらうためには、個別のサポートと継続を支援するアフターフォローの取り組みが重要です。アフターフォローとして、個別のキャリア面談やキャリアカウンセリングを実施することで、キャリアビジョンを具体化し、目標に向かって行動を継続してもらいやすくなります。
人事制度の改善・改革と適切に組み合わせる
キャリア研修やその後のキャリア相談を通じて、社員が思い描いたキャリアデザインを実現するためには、人事制度の改善・改革も必要です。研修でどんなに良い学びを得て、納得できるキャリアビジョンを描いたとしても、その実現が今の職場で叶わないと感じてしまえば、離職につながりかねません。
例えば、異動希望やキャリア公募、自己啓発の支援など、社員の自己実現、キャリアビジョンを支援する人事制度の構築も重要です。とはいえ、最初からすべてのキャリア支援をサポートできる環境が整っている会社は少ないでしょう。自社のステージや状況に応じて、人事制度を見直し、改善を検討するといった取り組みが大切です。
社内に多様なキャリアの選択肢を用意することは、社員の定着率やエンゲージメントを向上させる効果的な手段の1つです。キャリア研修と人事制度の改善を適切に組み合わせることが、社員のキャリア自律を支援し、企業全体の成長を促進することに繋がります。
外部の研修サービスを活用する
キャリア研修を実施する際は、外部の研修サービスを活用することも選択肢の1つです。自社内でキャリア研修を企画・実施することにもメリットはありますが、無理に内製化するよりも、外部の研修サービスを活用し、プロの講師に研修を依頼することもおすすめです。
また、社内だけで主導すると、先述したように、キャリア研修のゴールを組織の都合やニーズに合わせようと意識しがちになり、受講者の反発が生じるなど、裏目に出てしまう可能性もあります。外部の研修サービスを活用することで、こうした懸念も払しょくできるでしょう。 研修サービスを提供している研修会社では、豊富な研修内容を用意しており、研修の参加者・目的に応じて適切な研修プログラムを組んでもらうことも可能です。
ジェイックが提供するキャリア研修の特徴
当サイトを運営する株式会社ジェイックは、リーダーシップの発揮や主体性の醸成といった、ヒューマンスキルに働きかける研修サービスを得意とする研修会社です。ジェイックでは、グループ会社Kakedasを通じて、社員のキャリア自律支援プログラムとしてキャリア研修とキャリア面談をセットにしたプログラムを提供しています。以下、ジェイックのキャリア研修の特徴を3つ紹介します。
受講者の「強み」にフォーカスした柔軟性の高いプログラム
世界的な調査会社、アメリカのギャラップ社によると、強みを活かすことができている人やチームでは、
・生活の質が3倍高い
・強みを重視したチームは生産性が12.5%高い
・エンゲージメント、仕事への積極性が6倍高い
といったように、圧倒的なパフォーマンスやエンゲージメント向上が実現することが分かっています。
ジェイックのキャリア研修では、診断ツールを用いて個人の強みを抽出したうえで、これまでのキャリアの棚卸しや、将来のキャリアデザインを実施していきます。研修を通じて、受講者は自身の強みが明確に確かなものになり、自己肯定感・自己効力感が刺激され、計画作成、そして実際の行動変容へとつなげていけるようになります。
また、診断を使うことで誰も取り組みやすくする一方で、抽象度が高い「強み」の活用を考えることで、目の前の仕事をジョブクラフティングしたり、キャリアの可能性を限定せず、自社内で当てはめやすくすることも特徴です。
世界2,300万人以上が受けたアセスメントツール「ストレングス・ファインダー」の利用
ジェイックのキャリア研修は、受講者それぞれの持つ強みを引き出すことで、誰もがポジティブなイメージを持ってキャリアデザインに取り組むことができる研修プログラムとなっています。 研修内では、個人の「強み」を発見・引き出すためのアセスメント・ツールとして、世界3,100万人(2024年3月時点)以上が受けた「ストレングス・ファインダー®」を活用します。
「ストレングス・ファインダー®」では、個人の強みを「才能」、無意識に繰り返し現れる思考、感情、行動のパターンと考えます。研修では、診断を通じて自分の才能を知ると共に、「才能を成果に結びつけるやり方」を体得していきます。
キャリア研修の大きな目的は、従業員のキャリア自律を支援することです。そして、キャリアの構築は一人ひとり異なり、理想とするキャリアも各自で様々でしょう。「ストレングス・ファインダー®」による個人の「才能」を成果に結びつけるやり方は、異なる価値観や指向性を持つ従業員のキャリア自律支援において、抜群の相性と効果性を生み出します。
国内最大級のキャリア面談プラットフォーム「Kakedas」によるフォローアップ
「キャリア研修を成功させるためのポイント」でもお伝えした通り、キャリア研修は「キャリア自律を考えてもらうきっかけ、機会」という位置づけです。大切なのは、研修をきっかけとして、自分のキャリアを真剣に考えて具体化し、行動に移すことです。
ジェイックの研修では研修後のフォローとして、「Kakedas」という国内最大級のキャリア面談プラットフォームを提供しています。「Kakedas」は、国家資格を持つ社外のキャリアコンサルタントに、仕事や人間関係、将来のキャリアについて、本音で相談できる社外1on1サービスです。
「Kakedas」通じて、国家資格を持ったキャリアコンサルタントに仕事の悩みや将来の漠然とした不安を相談することで、前に進むためのヒントや今後の自己成長、キャリアの見通しを立てられるようになります。また「Kakedas」で相談相手となるキャリアコンサルタントは、外部の専門家ですので、「自社の上司や人事には話せない…」と思うことでも、気兼ねなく相談できる安全・安心の場であることがポイントです。
さらに、「Kakedas」では、個人を特定しない形の面談分析レポートを企業に提供します。対話データを分析するからこそ、エンゲージメントサーベイなどでは出てこない具体的、また本音が見えてきます。レポートは組織の人材育成戦略を考える貴重な手がかりとしても活用できるでしょう。
キャリア研修のカリキュラム例
ジェイックのキャリア研修に関して、研修カリキュラム例を紹介します。企業内でのインハウス(講師派遣)研修であれば、プログラム柔軟にカスタマイズできますので、お気軽にお問い合わせください。
①自己理解からはじめるキャリアデザイン
- キャリア自律が求められる背景とキャリア安全性
- ストレングス・ファインダー®とは?
- 強みを生かすとで自分らしいキャリアが描ける
- 才能とパフォーマンス/才能とキャリアの関係性
- 強みをキャリアに展開するための方程式
- キャリア形成に重要な「才能への投資」
- 「日常業務」と才能/キャリアのつなげ方
②強みにフォーカスしてキャリアを描く
- 【演習】診断結果から”強み“を知る
- 診断結果の配布
- 診断結果を個人毎に解説キャリア形成のポイント
- 強みを活かしキャリアを描く3つのSTEP ①自分を知る、②過去を知る、③未来を描く
- キャリアを描く上でのポイントと注意点
- 【演習】キャリアを描いてみる
- まとめ
キャリア研修実施までの流れ
お問い合わせ、資料請求
お問い合わせ・資料請求は、電話、Webフォーム、メール等で承ります。まずはお気軽にご連絡ください
ヒアリング訪問
お問い合わせいただいたご担当の方へ、対面もしくはお電話で、お問い合わせいただいた背景や目的などをお伺いいたします。その上で、貴社のご要望や課題に沿った研修コンテンツを作成いたします。
コンテンツ作成、企画書の提案
ヒヤリング内容を基に、弊社で企画書を作成いたします。企画書は、現状の課題、企画の目的(ゴール)、スケジュール、コンテンツ内容、講師、見積費用などを含んだ内容で提出いたします。
ご契約
企画書の内容でご納得いただき、実施日、講師が確定しましたら、ご契約の手続きに進みます。申込書の受領を持って契約完了となります。
研修実施
企画書の内容を骨子に、実施前までに講師と打ち合わせを行い、研修を実施いたします。
キャリア研修でよくある質問と回答
受講人数は増やせるでしょうか?
増やせます。参加人数が増えると、診断結果の読み解きや共有等の時間が長くなりますので、所要時間が増える形となります。
半日や1日での実施も可能ですか?
可能です。時間を伸ばしていただけると、ワーク時間を十分に取れますので、キャリアプランを描くところまで進むことが出来ます。また、貴社のキャリア支援制度(キャリアパスや社内公募制度、資格取得支援、キャリア相談窓口など)を説明したり、アレンジしたワークを追加すること等も可能です。
キャリア研修だけでキャリア自律が進みますか?
キャリア自律は考え始めるきっかけです。オプションで個別のキャリア面談を提供しています。キャリア自律を促進したい場合には、キャリア面談との組み合わせがおススメです。
弊社の課題や要望にフィットするよう、研修内容のカスタマイズは可能ですか?
はい、可能です。ジェイックでは、課題やニーズをヒアリングした上でカスタマイズした研修カリキュラムをご提案します。研修内容や方法、期間や回数など、要望に応じて柔軟に対応可能です。