研修で共創の機会を体験する
デール・カーネギーの「人を動かす」リーダーシップ&コミュニケーションコースを利用した背景を教えてください。
田端様:
当社では2024年から新たな中期経営計画を策定しました。その中で経営基盤のコアである「人財と組織力」の成長のため、「挑戦し共創する多様な人財」を育成するというワードが掲げられています。掲げられている「共創」をどう全社展開していくか、経営企画部が中心となって国内の各支店と海外の拠点を回り、社員に説明と対話を行いました。
参加した方々との話し合いを通じて、「共創」というキーワードがいまひとつ腑に落ちていないという印象を持ち、「共創」というワードを納得・浸透させるべくジェイックさんにご協力いただき、デール・カーネギーの「人を動かす」リーダーシップ&コミュニケーションコースを実施しました。デール・カーネギー研修は、今回のメンバーだけで終わらせず、引き続き全社へと展開していきたいという想いがあります。

研修ご依頼いただくまでの経緯と、参加メンバーについて教えてください。
田端様:
最初に参加対象となったのは、中期経営計画の起草メンバーとして関わっていた10名です。中期経営計画の起草メンバーは男性ばかりだったので、彼らが推薦した女性メンバーも5人ほど加え、さらに人財戦略部のメンバーなども加えて約20名で実施しました。
西岡様:
研修実施は、中期経営計画にある「共創」の推進が目的ではありましたが、それだけではなく、社員一人ひとりが主役にならなければという想いがありました。そのため、研修では中期経営計画をあまり意識しすぎずに、まずは「共創の機会を体験してもらいたい」という感覚でした。
当社の社員の傾向として、皆頭がよく、理解力も高いものの、相手の話を聴く「傾聴力」が乏しく、発信力も弱いように感じていました。部門を越えて共創を実現するためには、まず相手の話を聴き、自分の意見を正しく伝えることが大切なので、研修を通してそれらを認識してほしいと感じていました。
余談ですが、私は外部から来る営業や勧誘は基本的にお断りしていたのですが、ジェイックさんからは積極的な営業をしていただいたので、お会いすることにしました。商談の場で資料を拝見したら、面白そうで内容もとても良く、何よりジェイックの営業担当者が元気で頑張ってサポートしてくれそうだったので、取り入れてみようと決めました。
実施が決まり、研修プログラムを組む時も、自社の社員にあったプログラムにするために、事前に社員15人ほどにアンケート(デール・カーネギープログラムのアセスメント)を行い、様々な属性の意見を聞いてスタートさせました。
部門を越えた共創を実現するにあたり、社内にはどのような課題がありましたか?
西岡様:
清水建設の社員数は1万人を超えます。規模が大きくなる中で様々な部門が立ち上がってきましたが、業務が部門内で完結し、縦割り組織の傾向があります。そのため、横の交流が少なく、部門ごとに同じことをゼロから行っていることもあります。こうした無駄を無くすだけでも、イノベーティブな思考や取り組みへの時間を増やせると考えています。
田端様:
私は入社して3年ほどですが、私も入社時から縦割りの組織だなと感じていました。他の部署との関わりがなく、配属先でもほぼ全てのことが部門内で完結しているので驚いたのを覚えています。飲み会等には各部門の人が参加しているのですが、業務になると分かれてしまうので不思議です。
自分で言葉を発し、体現するプログラム
研修で学びになったポイントや、印象的な内容はありましたか?
田端様:
コミュニケーションが苦手な方が多いので、その課題解決ができるようなプログラムを重点的に組み込みました。実際に受講している社員を見ると、最初の方は、慣れない様子で話していたり、相手の承認に対するリアクションがぎこちなかったりしていました。皆、慣れていない印象だったので、それだけでもコミュニケーションのポイントに気づきがあったのではないかと思います。
西岡様:
ある意味、想定通りで皆、全然できていませんでしたね。例えば2人組で話をするセッションにも関わらず、最初は、お互いの膝が向き合っていない形で話している姿が見られました。しかし、研修が進むにつれ、徐々に膝が向き合うようになるなど、その場ですぐに研修効果がみられました。
デール・カーネギーのプログラムは自分で言葉を発し、体現する構成になっています。苦手意識を持つ人こそ、研修参加の意義があり、ただ聞いていればいい多くの企業研修とは異なり、殻を破る機会になると感じました。
田端様:
研修参加者から講師の川崎さんへの称賛が非常に多かったのも印象的でした。当社の社員は、川崎講師のような、講師というよりも、“体操の先生”のような印象の方がリードする研修に参加したことがなかったこともあり、社員のモチベーションが上がるきっかけとなりました。
西岡様:
川崎講師は、参加者1人ひとりがプレゼンするときに、その人に応じたアドバイスを的確に行ってくださいました。縮こまりそうな人には「もっと手を使って」、しかめ面の人には「笑顔で!」と、的確な指導をいただく機会が今までなかったので、体全体で伝える川崎さんが新鮮でした。
印象的だったのは、相手を褒めるメッセージをカードに書いて交換するセッションです。私も参加しましたが、どこか恥ずかしい半面、ものすごく嬉しくて、もらったカードは今でも大切に保管しています。セッションを通じて「普段は相手を褒めていない」という気づきや、相手が「自分に対してそんなことを感じていたのか」という発見があるなど、参加者も印象に残っているのではないでしょうか。職場でも実践してほしいです。
田端様:
1人ひとりの発表も普段の会話では聞けないような内容で新鮮でした。「この人はこういう背景があるのか」「こういう思いがあったのか」と興味深く聞き、お互いの距離が近くなった感覚がありました。

全社展開していくうえでの課題と対策
受講者の反応はいかがでしたか?
西岡様:
研修後のアンケートでは、「仕事以外の話ができて関係性が向上し、仕事の相談もしやすくなった」「自己開示をしたことで、安心して話せるようになった」「終始笑顔で接することは難しかったが、意識するようにしたら今までホウレンソウのなかった人が報告をしてくれるようになった」など、業務を進めるうえで重要な関係性の高まりを感じる回答が多くありました。
さらに、「相手の価値観を理解することをこれまであまり意識してこなかったが、意識することで業務の進め方も理解できるようになった」のような、対立しがちな人とのコミュニケーションにも有効という発見もありました。
ほかにも、相手を褒める部分での反応も多数あり、「若手にだけでなく、年齢の近い人や上の人も褒めていきたい」という意見など、研修をやればやるだけ効果が期待できそうです。
田端様:
アンケートにはびっしりと回答が書き込みされており、満足度も高かったことが分かりました。
西岡様:
プログラムは引き続き全社展開していきたいと考えています。一方で今後の研修参加者をどうピックアップするかは課題です。初回は比較的意識の高い人が集まっていましたが、そうでない人の場合は反応も違うでしょう。研修内容が体感型なので人によっては負荷を大きく感じるかもしれません。
田端様:
確かに対象者選定は課題であり、難しいと思います。
西岡様:
参加者の性格等により研修効果の出方が違うことを予測し、メンバーに合わせて内容を検討する必要があると考えています。
今後、研修で学んだことをどのように生かしてもらいたいですか?
西岡様:
リーダーに求められるのは熱い思いであり、熱量をもって語ることで人に伝わるようになります。「今日は何を話してくれるのか」と期待される話し方になって欲しいです。
田端様:
リーダーの熱量が変わると会社全体のエネルギー量も上がってきます。社内でそうした波が起きれば、皆が乗ってくることが期待できます。人財開発についても、経営トップの方々は背中を押してくれています。あとは社員がどう感じるかであり、当事者意識をもって取り組んで欲しいと思っています。
西岡様:
技術的なスキル、ビジネススキルは学べば身に付くものです。しかし共創するマインドや、それに伴う言葉、姿勢などは本人が意識しないと変わりません。「気づき」をいかに与えることができるか。教育ではなく「気づきの機会」をいかに用意するかが重要であり、それが奏功すれば組織開発も自然と実現されていくでしょう。
今後も通り一遍の場を用意するだけでなく、ダイバーシティを意識して、10人いたら10通りのアプローチを考え、気づきのための様々なスイッチを用意していきたいと思います。